「……ちょ、ちょっとトイレ!アストラルは小鳥と待っててくれよ!」
「あ、僕も行きます!」
小鳥が何か言い返す前に、遊馬はスタコラとトイレに逃げてしまった。そのあとを真月が追いかけていく。
「もう……遊馬ったら」
小鳥はため息をついて、そばにいるアストラルを見やる。少し前までは遊馬にしか見えなかった、デュエリストの幽霊。
色々なことが重なって、今では小鳥や一部の人間にも見えるようになった。
「アストラルもここで待っておくの?」
『ああ。エネルギー排出をしている姿を見られると、遊馬は死んでしまうらしいからな』
「そ、そうなの」
アストラルの真面目くさった顔と言葉に小鳥は苦笑いを浮かべる。そういえばアストラルは遊馬から離れられないんだっけ。遊馬も色々と苦労しているのだろう。
『……彼は、遊馬と一緒でも大丈夫なのか?』
「ま、まあそれは。何もトイレの中まで一緒ってわけじゃないし」
話の雲行きが怪しくなってきた。何か他に話題になるようなものはないかとキョロキョロと周りを見渡していると、アストラルが遊馬と真月の向かった方向をじっと見つめていることに気が付いた。
「アストラル?」
『……私は傍に居てはいけない。でも、彼は』
傍に居てもいいのだな。そうつぶやくアストラルをみて、小鳥は目を丸くする。
「アストラル。もしかして、やきもち焼いてるの?」
「ヤキモチ?ヤキモチとは、なんだ?」
アストラルは目を瞬かせ、小鳥に問う。いつも聡明な金色の瞳が、不思議そうに輝いている。
「うーんと、嫉妬してるってこと。真月くんが遊馬といつも一緒にいるのを羨ましいなーと思ってるとか」
『……嫉妬』
その言葉に、アストラルは俯いて考え込みはじめた。そんなアストラルを見て、小鳥は微笑む。思わず、言葉が漏れた。
「……私もね、同じよ」
アストラルは顔をあげる。
「真月くんって、ちょっと、抜けてるところがあるでしょう?そんなとき遊馬が世話を焼いてるのをみて、……うらやましいなあって思うの」
突然現れた転校生。“よかれと思って”いつもドジを踏む彼に呆れながらも、楽しそうに笑う遊馬を、よく見るようになった。
「今までずっと遊馬の前で強がってばかりいたから、今更こんなこと言えないなあって。だから、遊馬に優しくしてもらえる真月くんに、ちょっと嫉妬してる。——ごめんね、こんな話聞かせちゃって」
小鳥はごまかすように笑ったが、アストラルはどこか納得した様子で、微笑んだ。
『……小鳥は、本当に遊馬が好きなんだな』
「えっ、そういうわけじゃ…!いやそうなんだけど…」
慌てふためく小鳥。そんな彼女を見て、アストラルは笑う。
「——やべ、授業まであと5分しかねえ!いくぞ真月!」
「ま、待ってください遊馬くん!」
その時、遠くから声が聞こえてきた。どうやら、二人が帰ってきたようだ。
なにやら大きな声で騒ぎながら、大急ぎでこちらへ向かっている。
そんな二人の居る方を見つめながら、アストラルは言う。
『彼に負けてはいられないぞ、小鳥』
「……アストラルだって、負けちゃダメよ」
二人は、視線を合わせて微笑んだ。
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今更感溢れてるけど書きたかった。
遊馬が大好きなアストラルと小鳥ちゃんが好きです。
20141210