「シャーク」
呼ぶ声は産まれたときからずっと聞いている声だ。
「シャーク」
しかし、発せられる言葉は聞きなれないものだった。
「……なんだ、いきなり」
けだるげに振り向くと、声の主は「やっと気付いた」と嬉しそうに微笑んだ。
「たまにはあだ名で呼んであげようと思って」
「……はぁ」
またなんでいきなり。意味が分からん。そんな凌牙の意を察したのか、璃緒は笑いながら言う。
「だって、みんな揃えたようにシャークシャークって言うんですもの。私も呼んでみたくなって」
それに、と璃緒は続けて言う。
「昔の凌牙なら、シャークだなんて呼ぶの、許してくれなかったじゃない?」その言葉に、凌牙は黙りこむ。
——璃緒が病院に運ばれて、自分は決闘の表舞台から追放されて。
何にも希望がもてなくて、もうこのままずっと、絶望の底にいるのだと思っていた。
でも、今は。
自分より年下の奴らにシャークシャークとうるさいぐらいに呼ばれて、たまにそいつらとデュエルをして。そして、その隣には璃緒が居る。
「ねえシャーク、どうしたの?急に黙って」
なおもあだ名で呼び続ける璃緒に、凌牙はため息をついた。
「お前はシャークって呼ぶな」
「えっ、なんでよう」
璃緒のすねたような声。
そんな璃緒に向かって、凌牙は言う。
「流石に、家族ぐらいには名前で呼んでもらいたいからな」
思いがけない言葉に、璃緒は目を丸くする。
そうして、彼女は、心底幸せそうな声音で彼の名を呼んだ。
「凌牙」
名を呼ばれた少年は、ニヤリと笑ってみせた。
———–
自分で書いてていまいち意味がわからない内容ですが、とにかく仲良しな神代兄妹が見たかった。
このふたりが大好きです